アルファベットでみるIDA – 開発へのコミュニティアプローチ

貧困とは単なる所得水準だけでなく、脆弱性、排他性、説明責任を果たさない機関、無力さや暴力にさらされていることなどが挙げられます。IDAの支援適格国に対しては、世界銀行の最貧困向け基金、包括的な経済成長、能力開発および脆弱層の保護が共通の開発目標となっています。IDAは社会セクターに重点を置き、公共部門管理の赤字や組織・制度の整備といった複雑な課題に的確に対処するための新しいアプローチを導入しています。(PDFでみる-英語仏語

課題

IDA適格国は過去10年で著しい成長を遂げました。しかし、こうした国の多くは、経済成長に伴って不平等および格差の拡大がみられ、国内には取り残された地域や不利な条件下に置かれた人々がいます。

ガバナンスはIDA適格国の重要な開発課題のひとつです。昨日的な公的機関を設立し運営することは政府にとって時間のかかる課題であるため、脆弱なガバナンスと継続する連鎖を断ち切ることは困難です。特に、地方政府機関、開発資源に開発関連資源に対する脆弱なガバナンスにより、基礎的インフラへのサービスに対する貧困層のアクセスの欠如、格差の主な原因となっています。このような課題はそれ自体複雑ですが、多くのIDA適格国(特に、脆弱国や紛争影響国)でみられる不安定な条件により、さらに複雑な状況になっています。このような国では、人間の安全保障、社会的結束、政治的安定性、経済活動が不確実で不安定です。

現在、こうした国々は、最も深刻な開発課題を抱えています。脆弱国家および紛争影響国の状況をみると、貧困率が高く、福祉の成果も乏しいのが現状です。多くの場合、開発に必要な安定と社会的結束が欠如しています。また、貧困に取り組み、紛争を管理する強力かつ正統性のある機関が存在しません。暴力的紛争はこうした地域で再発する可能性が高く、さらなる貧困化、社会的結束の弱体化および諸機関のさらなる脆弱化につながります。結果として、改善させることが難しい貧困と不安定の悪循環に陥る可能性があります。

コミュニティ主導型開発(CDD)アプローチ

コミュニティ主導型開発(CDD)は地方開発のためのアプローチで、(地方政府を含む)コミュニティを対象として、計画立案の意思決定と投資資源に関わる権限を委譲します。このアプローチは、コミュニティへの権限移譲をはかり、これまで十分なサービスを受けることができなかった層にサービスを提供するうえで強力かつ有効な手段となります。中央政府の実現可能性に焦点を当てた従来型開発アプローチからの転換という意味で画期的です。CDDプログラムを運営するにあたっての原則は、透明性、参加型、現地への権限委譲、需要への応答性、説明責任および現地の能力強化です。現地に意思決定の権限を委譲し、資源を対象コミュニティの直接管理に委ねることは、基礎的サービスの効率的提供につながっており、この手法が継続されることにより、特に最貧困層およびコミュニティにおける貧困削減が目に見えて進みました。

これまでに得られた結果から、明確かつ透明性の高いルール、情報へのアクセス、適切なキャパシティ、資金支援を受けた場合、貧困層は、効率的に組織化を図りながら、コミュニティの優先課題を特定し、地方政府やその他の支援機関と協力して地域の課題に取り組むことがわかっています。世界銀行はIDA適格国のCDDを支援し、水供給・衛生、学校およびヘルスポスト(保健所)の建設、母子栄養プログラム、地方接続道路、小規模企業への支援といった多岐にわたる喫緊のニーズに対する取り組みを支援してきました。CDDは紛争および脆弱性への対応および被災後の状況において有効なことがわかっています。というのも、迅速、柔軟かつ効果的に基礎的サービスを再建してきたからです。脆弱・紛争影響下では、CDDアプローチは社会関係資本やコミュニティ内、コミュニティと政府との間の信頼再構築にも役立ってきました。

紛争影響国、または紛争影響下において進行中の32件のCDDプロジェクトに対し総額22億ドルの支援が行われており、うちアフリカ地域が15プロジェクト、総額12億ドルと最大のシェアを占めています。次いで東アジア・大洋州地域で、ミャンマーの全国CDDプロジェクト4億8,000万ドルが含まれます。

成果

小規模の独立採算運営で始まったCDDプロジェクトの多くは段階的に拡大し、全国規模に達しており、政府の正式な地方分権戦略と結びついています。こうしたプロジェクトにより、経済的福祉(所得および消費)やサービスへのアクセスなどの広範囲にわたる評価基準で成果が出ています。また、紛争後の状況において、CDDはサービスの迅速な提供および短期的雇用のための重点支援の提供において有効であることもわかっています。

世界銀行のCDDプロジェクトに関して行われた17のインパクト評価をレビューしたところ、所得貧困や貧困層の特定、保健、教育および安全な飲料水をはじめとするサービスへのアクセス拡大に関する結果を測定したプロジェクトの大多数において、世帯の生活水準や福祉の向上において全体として肯定的な成果が上がったことが判明しました。別の東アジア地域のCDDプロジェクトに関するレビューでも、プロジェクト参加コミュニティには所得の向上がみられました。世界各地のCDDプロジェクトのいくつかを評価した結果、サブプロジェクトとしてのインフラ投資は地方政府やセクター別機関が管理しているものと同等かそれよりも高い質を示しており、また、往々にして単価も低くなっています。世界銀行独立評価グループ(IEG)による評価でも、保健と教育のポートフォリオとCDDプロジェクトにおいて紛争影響国でのジェンダー主流化が効果的に図られた結果、多くの国では女子就学率が大幅に上昇しています。

完了したIDA融資CDDプロジェクトの成果事例

世界銀行は2010年から2015年にかけて、IDA融資を受けたCDDプロジェクトを90件実施しました。約76億ドルのIDA融資は世界銀行のオペレーションを通じて、約397億ドルのレバレッジ効果をあげ、プロジェクト実施国は51カ国になります。アフリカ地域が最大のシェアを占め、次いで南アジア地域、そして東アジア・太平洋地域の順となっています。

こうしたプロジェクトを通じ実施されたサブプロジェクトは約16万4,000件、受益者数はおよそ1億7,600万人にのぼります。サブプロジェクトをセクター別でみると、3大分野は所得向上・雇用創出、水供給・衛生、教育でした。

所得向上:CDDプロジェクトの支援対象は、きわめて重要な経済インフラ(道路、貯蔵施設など)の整備と修復、バリューチェーン分析のための研修、サブグラントおよびその他の支援向け資金供与、小規模ビジネスに関する助言、研修センターと職業学校の建設などでした。

給水・衛生:CDDプロジェクトにより、飲料用および生活用水供給施設のほか、屋外トイレや他のコミュニティ向け公衆衛生インフラが建設、修復されました。こうした支援の結果、安全な飲料水へのアクセスが拡大し、水の入手に必要な時間が短縮しました。公衆トイレは、貧しい農村コミュニティ住民の衛生状態の改善に寄与しました。「スリランカ第2次コミュニティ開発・生計向上プロジェクト」では、合計463件のコミュニティ給水プロジェクトが実施され、水汲み時間の短縮、健康状態の改善、コミュニティの公衆衛生水準の向上、他の所得向上活動のための時間的余裕につながりました。ネパールの「第2次地方給水・衛生プロジェクト」は農村部の110万人余りの給水アクセスを改善し、現在では住居から徒歩往復15分以内で水を汲めるようになっています。

教育:CDDプロジェクトは、主に教室や図書室、職員宿舎といった学校施設の建設、改修のほか、保育所からコミュニティカレッジまでの学校備品供給を支援しています。こうした取り組みは、特に女子の就学率、出席率、学習内容の向上につながっています。例えば、ナイジェリアの「コミュニティおよび社会開発プロジェクト」とタンザニアの「地方政府支援プロジェクト」のインパクト評価では、就学率および出席率の向上に寄与しています。

農業:CDDプロジェクトは、灌漑、市場、コミュニティ貯蔵施設、食肉処理場といった農業インフラの建設に役立ちました。コミュニティはCDDサブプロジェクトを通じて灌漑網を復旧し、当該国の作物収量の増加につながりました。ブルンジの「コミュニティおよび社会開発プロジェクト」報告書によると、販売業者はかつて小さな木製テーブルや地面に敷いたマットの上に商品を陳列していましたが、新しい地方市場には、雨をしのぐためのセメントの床と屋根が建設され、市が立つ日にみられる販売業者も増えました。

保健:CDDプロジェクトは、栄養不良状態の削減および母子保健の改善に寄与しました。分娩室を含むクリニックおよび保健所がサブプロジェクトにより整備され、プライマリー・ヘルス施設の利用増加につながりました。ボリビアでは、妊婦健診受診者および介助分娩の各比率が大幅に上昇しました。ガンビアの「コミュニティ主導型開発プロジェクト」における保健介入の受益者は10 9,640世帯にのぼりました。報告によれば、週に1回しか医療を受けられなかった保健施設において、1日当たり平均200~250人の患者が受診し始めました。これは、特に妊産婦および母子の医療アクセス改善に寄与しました。

運輸:道路、橋梁およびバス停留所といった公共インフラのサブプロジェクトは、市場、学校および保健施設といった基礎的社会経済インフラとサービスに対する受益者のアクセス向上に寄与しており、移動時間と費用の削減に結びついています。ラオスのCDDプロジェクト(「貧困削減基金」)に関し最近行われたインパクト評価によれば、受益コミュニティから最寄りの隣村までの移動時間は季節によって25~50%短縮しました。

ブルンジでの「コミュニティおよび社会開発プロジェクト」のコミュニティ・サブプロジェクトに関するインパクト調査によれば、保健所および小学校までの平均距離は5~10 kmから5 km未満へと短縮されました。さらに運輸プロジェクトは、農業生産地域の孤立解消および農家により市場に持ち込まれる農産物の増加にもつながりました。CDDプロジェクトはサブプロジェクトを通じて最貧困層の基礎的サービスおよびインフラへのアクセス確保を支援する一方、コミュニティに権限を委譲し、コミュニティの参加、意思決定および資源のコントロールを強化することを目指していました。同プロジェクトには、調達、契約締結、報告およびビジネス開発といったスキルを含め、コミュニティとして資源を効果的に管理する能力を向上させるため、プロジェクト促進チームおよび現地コミュニティグループを対象とした能力開発の要素が組み込まれていました。

肯定的インパクトに寄与する要因

CDDプロジェクトが貧困削減およびサービスへのアクセス改善に成功を収めるのに寄与した要因には以下が挙げられます。

  • 資源を貧困地域に戦略的に配分、その際には貧困マップ、最近の全国統計データ、その他主要ステークホルダー間で合意された資料を用いたこと。
  • 参加型および包摂的なサービス提供モデルを確立し、コミュニティが自らの開発ニーズおよび最貧困層を特定できたこと。
  • 質が高く十分なファシリテーションおよび技術面の支援を提供したこと。
  • コミュニティが参加型プロセスに関わり、開発のための資源を直接管理する能力を構築したこと。
  • コミュニティおよびサブプロジェクトの選定とコミュニティレベルにおけるプロジェクト資源の活用についての説明で透明性を確保したこと。
  • 数年間を対象とした十分な規模のグラントを供与し、経済面で生産的な目的に用いたこと。
  • プロジェクトの立案および実施に柔軟性をもたせ、プロジェクトの成熟とともに引き出される教訓および洞察に適応させたこと。

世界銀行はCDDアプローチを積極的に支援しており、このアプローチは世界各地で展開されています。具体的には、ターゲットを絞った分析作業、世界各地の中心的なCDDプロジェクトへの技術支援、情報と知識の共有による質の確保およびスタッフの技能向上があり、これらはすべて、支援を受ける国の貧困、エンパワーメントおよび基礎的サービス供給の改善に対し大きな影響をもたらすことができます。

プロジェクト事例 1

アフガニスタン「包摂的農村コミュニティ開発」

国家連帯プログラム(NSP):2003年~

課題

アフガニスタンは2001年のタリバン政権陥落以来、著しい政治的、経済的および社会的進歩を遂げています。これまで5回の国政選挙を経て、特に女性にとってこれまでよりはるかに開かれ、包摂的な社会が築かれています。2003~12年の経済成長率は変動が激しいものの、年平均9.4%にのぼり、一人当たりGDPの186ドル(2002年)から688ドル(2012年)に向上しています。主要な社会指標も改善しました。初等教育純出席率は2007~11年に37%から57%へと上昇する一方、同期間に女子の学校出席率も29%から48%へと改善しました。プライマリー・ヘルス・ケアの普及率は2001~08年に8%から68%へと8倍以上に拡大し、他のサービスへのアクセスも大幅に改善しています。電化率は2005~11年に3倍増、飲料水へのアクセスは2007~11年に27%から46%へと拡大し、カブール、カンダハルおよびヘラートといった主要都市間の移動時間は従来の4分の1に短縮されました。

しかし、社会的経済的進歩の継続にとって、安全保障上の大きな脅威が厄介な課題となっています。これまで成果があがってきたもかかわらず、アフガニスタンは依然として後発開発途上国です。貧困率は2013~14年において39.1%で、格差拡大の兆候もみられます。人口の大多数(約70%)は農村部に居住しており、貧困率はさらに高く、識字率は低く、基礎的サービスは不足しています。農村部の問題にさらに輪をかけているのは、同国の憲法で定められているにもかかわらず、政府機関が州より下位のレベルには存在しておらず、最も基礎的なサービスの提供をなおさら困難にしています。

現地のサービスに関しては、アフガニスタン政府が国際的なドナー・コミュニティの支援を受けながら、より協調的かつ多面的な開発アプローチを採用し、実施する必要が依然として大いにあります。このアプローチには、ローカルガバナンスの強化と復旧・復興両方の要素を含める必要があります。

アプローチ

2003年から始まった国家連帯プログラム(NSP)はアフガニスタン政府が優先する基幹国家プログラムのひとつで、現在第3期に入っています。NSPではコミュニティ主導型開発アプローチにより、ローカルガバナンスの課題に取り組み、基礎的サービスの提供を支援しています。NSP1~3期にわたるIDA融資承認額は全体で3億9,800万ドルに達しており、また、世界銀行が管理する「アフガニスタン復興信託基金」を通じて16億ドル余りが供与されています。NSPの目的は、ローカルガバナンスおよび社会経済発展のための実効性ある機関として「コミュニティ開発協議会」(CDC)を設置、強化および維持することにあります。同協議会は、当該コミュニティにおける開発プロジェクトの特定、計画立案、運営およびモニタリングにあたり、これによりオーナーシップとエンパワーメントの意識を高めるよう付託されています。CDCは少なくとも20世帯以上から構成されるコミュニティで、女性の参加率が約50%であれば設立できます。住民は秘密投票によりCDCのメンバーを選出します。CDCは12~30名のメンバーから構成され、任期はNSPの実施機関である地方復興開発省(MRRD)により定められており、任期終了後、自由かつ秘密投票方式による選挙によって後任が選出されます。

結果

NSPでは2003年以降、3万5,000余りのコミュニティでCDCを設立しており、このうちの1万1,500余りのコミュニティでその後実施されたCDC選挙を支援してきました。

現在に至るNSP全期を通じて、これまで約16億ドルのコミュニティ・ブロックグラントがCDCに対し供与されており、8万9,600余りのサブプロジェクトが資金支援を受け、このうち7万9,000以上が完了しています。サブプロジェクトの投資対象は、運輸(30%)、給水・衛生(25%)、灌漑(26%)、電力(5%)およびその他の小規模インフラ計画(14%)でした。こうした活動により、熟練および未熟練労働あわせて5,200万人・日の有給雇用が創出されました。

CDCはアフガニスタン全国の村落のうち85%に設立されており、地元コミュニティを参加させることで開発プロジェクトの実施に非常に有効であることが分かっています。「CDCのメンバーは当該コミュニティの各地から来ているので、自分のコミュニティが何を必要としているか最も知る立場にあります」と、シェール・シャー・シャヒドNSPバルフ州前局長(41才)は述べています。そして「村落レベルの問題を特定し、優先順位づけするうえでCDCほど有効な組織体制はありません。プロジェクトをどのように実施すれば、そのインパクトが最大数の住民に行きわたるかについて熟知しています」と続けました。

バルフ州の小自治体コーデ・バルクでは、道路沿いに延長963mの用水路が建設されました。広大な畑地はありませんが、住民はこの用水路から水を引き込んで、家庭菜園で野菜を栽培することができます。この用水路の再建費用として300万アフガニがNSPから供与されましたが、他方でトフタ村およびコーデ・バルクの住民は30万アフガニを拠出しました。

バルフ州のホマユン・アジャムNSP州マネージャーによれば、上記用水路の受益者は938家族にのぼります。コーデ・バルクの住民ムハンマド・アンワル(57才)は用水路の再建を喜んでいます。「以前は用水路が舗装されていなかったので、大半の水が地面に吸収されてしまい、隣接する水路には流れませんでした」と、アンワルは言います。「さらに、集落に到着するまでに2〜3時間かかりました。しかし今や用水路が舗装されたので、水は20~30分ほどで私たちのところにやってきます。この用水路により運ばれた水はすでに、ここ一帯の緑地を灌漑しているのです」

用水路は集落を取り巻く緑地帯をよみがえらせ、可耕地にも息吹を吹き込みました。水不足のために耕されないままになっていた畑には現在、コーデ・バルクのための小麦が栽培されています。住民は自分たちの土地で作物が再び育ち、地元経済にもよい影響を与えていることを喜んでいます。

NSPは、人間開発指数が依然として最低値である付近にあり、人口の半数以上を構成する女性と子どもの社会指標のいくつかが最悪の国において、能力の向上および女性のエンパワーメントに効果的な役割を果たしてきました。

大半の場合、CDCメンバーの半数は女性であり、こうした女性は村落レベルの意思決定に参加し、自分の意見を表明する機会を得ています。「NSPは女性に対し政府公認のプラットフォームから開発プロセスに参加するまたとない機会を提供しており、女性は初めて公式な枠組みの中で集い、自たちの開発優先事項について討議し、自分たちの関心事を真剣に取り上げてもらうことが可能となっています」と、NSP監督官庁のナスィール・アフマッド・ドゥラニは述べています。

ダーイクンディー州のCDCメンバーのひとりアティフ・ポヤは、女性は今やコミュニティの課題に大きな発言権を持っていると述べています。「女性はかつて、討議や意思決定プロセスに参加する権利を持っていませんでした」と彼女は言います。「私たちの会合の女性参加率は約40%で、意思決定において女性の意見は尊重されています。

2013年に実施された厳格なインパクト評価では、NSP第2期におけるサービス・インフラ・電気水道へのアクセス、経済的福祉、ローカルガバナンス、政治的態度および国づくりおよび社会規範に関する結果が定量化され、女性にとって重要な成果が著しく優秀であることが判明しました。

この評価によれば、プロジェクトによって安全な飲料水および電力へのアクセスが改善しました。前者に関しては、水汲みに要する時間の短縮と保護水源地の利用増加がみられました。また、教育、ヘルス・ケアおよび女性対象のカウンセリングに対するアクセス拡大のほか、女性の出席率および学習の質の改善がありました。

さらに、経済的福祉に関する住民の感じ方も向上したように見受けられることが分かりました。特に女性は経済面で肯定的な見方を持続する傾向が強く、これはNSPへの参加を通じた女性の経済的、組織・制度的および社会的向上を示しています。

さらに、CDCの選挙は住民のローカルガバナンスに対する満足度を高め、女性に対するこうしたサービスの提供を増やし、地方議会に参加する女性の割合も増やしています。評価の結論は、NSPは「プロジェクト完了後も女性の代表が続いていくための永続的な経路をつくりだしています」と位置づけています。

プロジェクト事例2

ハイチ都市部コミュニティ主導型開発プロジェクト(PRODEPUR)における需要牽引型地方開発:2008年~

課題

犯罪と暴力はハイチの開発にとって深刻な課題となっています。ハイチの都市貧困居住区は人口動態、社会経済、組織制度および政治的リスク各側面の要因が組み合わさり、激化する争いの被害者でもあり、また同時に要因でもあります。同国都市部、特に首都のポルトープランスの主だった居住条件不利地区の武装ギャングは、こうした地域を誘拐およびその他の犯罪の拠点として利用してきました。こうした集団による悪影響をもたらす活動は首都およびその他都市でも広がっており、人々の福祉および経済活動に損害を与え、高い暴力犯罪率を助長しています。

特にポルトープランスの居住条件不利地区における暴力と不安全は、ハイチの政治プロセスを損ない、争いを助長し、経済活動を阻害し、住民および企業にコストを負担させ、海外への移民を増加させ、2010年大地震後の復興および開発に悪影響を及ぼしてきました。

こうした犯罪および暴力が一因となって、シテソレイユ、ベルエア、マルティッサンおよび他の都市における暴力的で困窮した地域の生活条件は、南北アメリカ大陸の中で最悪となっています。高失業率と深刻な貧困の中、住民には栄養不良が蔓延していました。

こうしたスラムでは安全な水と衛生へのアクセスや固形廃棄物の収集が未整備なため、住民の健康と環境が脅かされていました。また、公共施設やサービスもほとんどなく、法執行機関を含むあらゆる種類の国家機関はヨチヨチ歩きの段階にありました。

アプローチ

CDDアプローチは地方開発プロジェクトに関わる計画上の意思決定と投資資源に対する権限をコミュニティグループに委譲するものであり、ハイチの争いと暴力の緩和に役立て、また、ターゲットとするスラム地域の安定を支援するための手段として選定されました。具体的には、受益コミュニティに対し迅速に基礎的サービスへのアクセスを改善し、また、所得向上機会を提供することでした。IDAの「ハイチ都市部コミュニティ主導型開発プロジェクト」(PRODEPUR:フランス語の略称)に対する融資承認額は5,320万ドルにのぼります。PRODEPURは、5自治体を対象に政府により「優先地域」として特定された17カ所のうち10カ所で行われました。

政府は優先地域の介入に重点を置き、暴力と犯罪が頻発する特に危険な界隈の住民に対する基礎的サービスを修復し、目に見える改善を示すことで政治的安定性をもたらそうとしました。コミュニティ組織は参加型プロセスを通じ、基礎的および社会的サービスへのアクセスを改善するサブプロジェクトの提案、選定、実施および維持管理に携わりました。また、介入地域を特定するための柔軟かつ参加型の境界設定方法を導入しました。公式の境界設定はほとんど行われていないためです。

結果

PRODEPURは、水、電気および衛生サービスへのアクセスを拡大するコミュニティの既存の取り組みを支援することで、27万人余り(2015年2月現在)の生活条件の向上に役立ちました。また、公共スペースの創出のほか、道路や回廊の復旧により隣接コミュニティの保健センター、学校、その他のサービスへのアクセスを向上させることで、近隣界隈の改善にも役立っています。

このプロジェクトでは、ポルトープランスおよび他の3都市の対象地域で合計493件のサブプロジェクトが実施されました。2010年1月の大地震への対応ではこのプロジェクトに対し追加的な資金が供与され、対象コミュニティの災害復旧ニーズに対処するサブプロジェクトに高い優先順位が直ちに置かれました。例えば、公共スペースのがれき撤去や地元排水溝の浚渫に焦点を当てた、現金のための労働サブプロジェクトなどです。

こうした活動により、ベルエア、シテソレイユ、デルマおよびマルティッサンの界隈において5,000人余りの一時的雇用が生まれました。追加で供与された資金は新しいコンポーネント(住宅修繕および再建)に充てられ、基礎的インフラおよびサービスを含めコミュニティ全体の改善に寄与し、当該都市部で暮らす約2万4,800世帯が恩恵を享受しました。

PRODEPURは小規模インフラおよび生産、所得向上サブプロジェクトも支援しました。小規模なレンガ製造工場であるFENADは、PRODEPURの資金支援を受けて完了したサブプロジェクトのひとつです。FENADが2010年に事業の着手を決めた際、資金および技術面での資源が不足していました。2012年にPRODEPURから有望なサブプロジェクトとして選定されると、FENADは自己資本の10%余りを出し、2万ドルの資金支援を受けました。プログラムの技術および事務面の研修のおかげで、労働者および上級社員は製品および企業経営の両方を改善しました。

FENADは2015年までにコミュニティ出身労働者40人と間接労働者50人を雇用しており、1日当たりのレンガの売上は1,500個、月当たりの利益は15万ハイチグールド(およそ3,200ドル)となりました。こうした実績は、10人の労働者でレンガの1日当たりの販売個数が約150個から始まった会社にとって真の成功を意味しています。現在では、FENADは自立しているだけでなく、自社の土地も購入しました。「一生懸命働き、得られた利益を使って、100万グールド(およそ2万1,000ドル)を支払いました」とFENADマネージャーのチェベリン・ニコラスは誇っています。

プロジェクト事例3

「ラオス貧困削減基金第2フェーズ」における包摂的コミュニティおよび地方開発:2011年~

課題

過去数十年におよぶ急速な経済成長にもかかわらず、ラオスの貧困率は高く、特に農村部と少数民族において著しくなっています。社会的包摂と効果的なサービス提供が同国の開発に関する議論の的となっています。

近年貧困から脱出した多くのラオス人が、経済的または気候関連のショックにより再び同国の貧困線を下回るようになっています。また、貧困率はさまざまな地理的地域によって、また、49存在する民族によって大きなバラツキがあります。基礎的インフラの未整備により、貧困コミュニティの貧困脱出がさらに難しくなっています。

例えば、村に学校がなかったり、最寄りの学校までの道路がなかったりすれば、子どもが教育を受けることは困難です。また、周辺にヘルスポストや安全な水の供給がなければ、子どもの健康を保つことは難しくなります。現在、ラオス人の約19%は栄養不良状態にあり、5才未満の44%は発育不良です。

アプローチ

貧困削減基金(PRF)は、このプロジェクトの対象貧困コミュニティにおける基礎的インフラ、サービスへのアクセスおよび利用を改善するために2002年に創設されました。この目的を達成するため、包摂的なコミュニティおよび地方開発プロセスが採用され、持続可能性の確保に重点を置いた基礎的な社会・経済インフラ向け資金が調達されます。プロジェクトの第2期(PRF II)が2011年に始まり、IDAは3,660万ドルの融資を承認しています。

プロジェクトは、コミュニティ・インフラへの資金調達、現地の能力強化、現地機関が開発資源の計画と管理において参加型の意思決定プロセスを用いる能力を強化することで貧困を削減するラオス政府の現行取り組みを支援しています。

プロジェクト受益者の約70%は少数民族です。他のCDDプロジェクトと同様、PRF IIは受益者自身により特定された小規模な第3次公共インフラに対しブロック・グラントを供与すると同時に、コミュニティ住民および地方政府職員が透明性と責任を持ってニーズを特定し、取り組むことができるプロセスを強化し、改善しています。

結果

2016年9月現在、サブプロジェクトは合計で1,900件を上回っており、全人口の約10パーセントに相当する約65万人の農村部居住者が恩恵を享受しています。すでに4年以上経過したサブプロジェクトの90%以上が良好またはかなり良い状態を継続しており、PRF投資は全体として、他の資金調達による類似投資に比べ費用対効果が同等か、高くなっています。

プロジェクトが実施されている4県の約4,400世帯を対象に定量および定性的調査手法による無作為化比較インパクト評価が行われ、サービスへのアクセスおよび参加とガバナンスに関するコミュニティの見方について評価が実施されました。

2015年に実施されたこの終了時調査によれば、支援を行った村落では有意な結果がみられ、最寄りの村落へのアクセスに要する時間が25~50%短縮し、乾季における保護水源への世帯アクセスが約6%拡大し、学校建設の質に対する見方が向上し、村落の意思決定への影響力に対するPRFコミュニティの見方は9%余り向上しました。こうした結果の多くは、プロジェクト介入地域に暮らす世帯のうち貧困下位40%において顕著に表れています。

ラオス政府の要請を受け、2016年7月にはPRF第3期向けに3,000万ドルが新たに承認されました。これにより、PRFはプロジェクトの前段階の結果をスケールアップすることができます。第3期の対象となる受益者の大半は、インフラへのアクセスが悪い遠隔の山岳地帯に暮らす貧しい少数民族となります。