危機対応融資制度

2011年2月15日のIDA理事会で承認されたIDA16の重点課題のひとつが、国外で発生した自然災害や経済的ショックに対するIDA国の対処能力の強化です。危機がもたらす影響に対して迅速に組織的かつ透明性ある形で対処し、危機対応用の追加資金を提供するために、独立した危機対応融資制度(CRW)がIDA16内に設けられました。

CRWは、IDA国が深刻な経済危機や大規模な自然災害に対応し、長期的な開発軌道へと戻るために役立つ追加資金の提供を主たる目的としています。2015年11月、IDA理事会はCRWの対象となる適格基準を拡大し、公衆衛生にまつわる緊急事態と感染症を加えました。

自然災害の場合は、CRWの対象となるのは著しく激甚な事象です。CRWによる追加資金は、被災者へのセーフティネットや、災害で破壊された基本的な物的資産の復旧に充てられることで、国連による緊急救援活動を補完します。
経済危機の場合にCRWの対象となるのは、きわめて多くの国々に影響をもたらした外生的なショックによる深刻な経済危機です。CRWの適用が検討されるのは、広範囲にわたって、あるいは地域的に、多くのIDA国でGDP成長率が前年比で3ポイント以上低下すると予想されるほどの危機的状況の場合ですが、CRW融資が提供されるかどうかの最終決定は財政への影響についての分析に基づいて下されます。CRW融資が提供されることになった場合は、脆弱層への影響を緩和し、保健、教育、インフラの各セクターで危険にさらされている中心的な開発支出を保護することが目標となります。

深刻な価格ショックが起こり、その結果としてGDP成長率が3ポイント低下しないとしても、(i)ショックが広範囲にわたり、各地に財政的影響をもたらし、(ii)国際的な協調対応が必要であるというコンセンサスが形成されており、(iii)影響を受ける国々に対する既存のIDA配分額では適切な対応には不十分であるとみなされる場合も、例外的にCRW支援が提供されることがあります。

公衆衛生に関する緊急事態や感染症の場合、IDA被支援国が国土全体で公衆衛生面の緊急事態を宣言し、世界保健機関(WHO)も2005年に定められた国際保健規則(IHR)に沿ったグローバルな警告・対応システムのもと、事態が国際的な重要性を帯びる可能性があると宣言した場合にCRWが発動されます。

CRWによる融資は国際的な協調対応の一部であり、最後の手段として利用されるものです。したがって、IDA国はいずれも潜在的にはCRW支援を受ける資格があるものの、実際にCRW融資を受けられるかどうかには、国別の状況(危機による影響の大きさ、別の資金調達源の有無など)が関係してきます。CRW融資の可否についての最終決定は、危機の深刻さや別の支援メカニズムの有無などについての実証的判断に基づいて、世界銀行理事会が判断します。

IDA17により、これまでギニア、リベリア、マラウィ、ネパール、シエラレオネ、ソロモン諸島、バヌアツ、ツバルにCRWの資金が拠出されています。

危機対応融資制度の適格基準および実施調整の詳細はこちらを参照